ねむようこ『少年少女』(2011年,小学館)
を新見から津山に帰る姫新線で読みました。
『少年少女』というタイトルのマンガでは,福島聡『少年少女』(1~4巻,Beam comix)という偉大な傑作がありますが,ねむようこさんの『少年少女』もとっても愛おしい作品でした(黒木香+ベイブリッジ・スタジオの装丁もとってもキレイで素敵です。)。
この作品は6篇から構成されていますが,私は「少年少女」「赤コートのセルマ」がと~っても大好きです。
「少年少女」は,「もうすぐおじいちゃんが死ぬそうです」というソバカスの「少女」の冷めたモノローグから始まります。私も,中学生の頃に祖父が他界したときに,父や祖母や親戚が通夜や葬儀に奔走するのを「子ども」としてどこか他人事のように見てたことを思い出しました。悲しいはずなんだけど,不謹慎ながら学校を休めて嬉しかったり,非日常感にドキドキしたりね。「少女」も,「少年」から「おじいちゃんが死ぬのってどんな気持ち?」と聞かれて,「悲しい」と答えつつも,モノローグで「条件反射 私たちはよく鍛えられている」と述懐するのですが,何だかぐさりと来ました。そして「少年」と「少女」はラストシーンで涙するのですが,とってもとっても印象的なシーンです。きっと,ねむようこさんは,子どもの頃に経験した肉親のお葬式のときにどこか不謹慎でフワフワした不思議な感情を持っていたのを大切に温めてながら,散りばめるコトバと表情のカットを洗練して,この作品に相応しいだけの時間をかけて描いたんだろうなあって思いました。
「赤コートのセルマ」は「巡り逢うこと」に関するお話ですが,読んだ後,久しぶりに矢野絢子「ニーナ」(『ナイルの一滴』所収)と「ふたつのプレゼント」(『窓の日』所収)を聞きたくなって,3人ぐらいしか乗っていない姫新線の中で聞いて,恥ずかしいくらい泣いてしまいました。内容は言っちゃわない方がいいと思うんですが,とてもとてもと~っても素敵なお話です。
ねむようこさんのマンガは,魚喃キリコさんのように絵はシンプルで線も迷いがない感じなのに,絵に温かみとかわいさを感じられます(あっ魚喃キリコのマンガも表現しきれないくらい好きです。)。『午前3時~』シリーズでブレイク(?)したねむようこさんですが,これからも『パンドラ』『少年少女』のような短編を描いてくれたらうれしいなー。