あの日から10年
今日は、ハンセン病訴訟における、国の隔離政策の過ちと、それに基づく賠償責任を正面から認めた熊本地裁判決について、当時の小泉首相が控訴断念を発表した、あの劇的な日から、ちょうど10年目の記念日です。私はあの夜、弁護団の一員として、有楽町駅前の沸き返るような「祝勝会場」にいました。ハンセン病療養所「長島愛生園」で原告の方々と喜びを分かち合った熊本地裁判決当日の1日とともに、10年経った今でも鮮明に記憶に残っている、本当に素晴らしい1日でした。
この訴訟で弁護団は、「被害に始まり、被害に終わる」をスローガンに、毎週のように療養所に足を運んで、隔離政策による被害の実態の把握に努めました。また、なまじ法律家としての経験則がある弁護団のメンバーよりも、隔離政策による被害を身をもって経験されてきた元患者の方々の方が、控訴断念を勝ち取ることについて、より強い確信をお持ちでした。この種の訴訟では、被害実態の正しい理解が何よりも重要であることを、あらためて痛感します。
現在、各地のハンセン病療養所の将来構想が打ち出されていますが、その実現への道のりは容易ではないのが実情です。また、残念ながらハンセン病患者・元患者の方々に対する差別・偏見が無くなったわけではない現状に鑑みても、この訴訟のスローガンであった「人間回復」は、未だ道半ばであると言わざるをえません。判決と控訴断念の10周年を機に、この問題について、皆さんにご理解を深めていただくことを、願ってやみません。