『先祖になる』池谷薫(2012年)
をシネマクレールで観ました。
この2年間で観た映画で最も素晴らしい映画でした。号泣し過ぎて,劇場から出るのが恥ずかしくて仕方がありませんでした。
昭和9年生まれの岩手県陸前高田市気仙町に住む佐藤直志さんにまざしを向けたドキュメンタリーです。詳しい物語は,私なんかが説明するよりも,HPで読んでもらった方が絶対にいいです。
http://senzoninaru.com/
震災から約1か月後の佐藤さんとロングインタビューから始まり(このショットは監督が初めて佐藤さんのご自宅を訪問したときのものらしいです!!),何の希望も見出せないような光景の土地で,佐藤さんを軸として,美しい四季の流れと作物の成長と人々の「復興」と感情の揺れが見事にリンクしながら,ストーリーが展開します。
(以下ネタバレあり)
毎朝,メガホンを使って佐藤さんと同じく仮設住宅に行かずに気仙町に残った管野剛さんに挨拶する佐藤さん,
消防団員としておばあちゃんを背負って逃げる途中に津波に流れされて亡くなった長男を拝む佐藤さんとお嫁さん,
浸水地域からの立ち退きを求める若い職員の両手を握りながらゆっくりと話し合う佐藤さん,
がれきの上にそばの種をまいたり,チェーンソーの刃を研いだり,家を建て直すために津波で枯れた杉をチェーンソーで伐採する佐藤さんの営み
震災後間もない時期に「けんか七夕」を開催した皆さん,
町内会解散の危機に対して「けんか七夕」で気持ちを叫ぶ青年団のリーダー,
地鎮祭が終わって佐藤さんに泣きながら「頑張って。」と声をかける山伏さん,
佐藤さんの気持ちに理解をしながらも,「安心を安全」を求めて別居して暮らしている複雑な感情に揺れる奥さん,
杉を伐採した後の神事を佐藤さんから静かに教わる若者たち,
自宅解体後に自宅脇の納屋で暮らす佐藤さん,
佐藤さんの新居の棟上げに集まったコミュニティの皆さん,
佐藤さんの新居を訪問した,佐藤さんの長男が亡くなった翌日に生まれたお孫さん
ラストシーン,新居で美しい光に包まれる佐藤さん
ちょっと感情が揺さぶられ過ぎて,この文章を書きつつも思い出して泣けてきました。
無条件に世界中の人に観て欲しい映画です。きっときっと一生忘れられない映画になると思います。
しかし,シネマ・クレールでは7月26日(金)まで午前10時の1回上映のみです(涙)。
(広島のサロンシネマでは8月3日(土)~8月16日(金)のようです。)
もし,最寄りの映画館で上映されることがあり,興味がある方はぜひぜひご覧下さい。