終末期の成年後見人の悩み Fm 水谷弁護士

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認知症が進行すると,飲み込み機能が衰えます。飲み込み機能が衰えると,食道ではなく気管に食事が入ります。これが誤嚥です。誤嚥となると肺炎を起こして,食事がとれなくなることがあります。このようなときは,胃ろうでチューブから栄養剤が入れられますが,高齢者には相当なストレスがかかるようです。

胃ろうの手術が必要となると,後見人となった弁護士は,医療機関から胃ろう手術の同意書へのサインを求められます。そもそも成年後見人が,胃ろうという手術に同意する権限があるとは考えていませんので,このような場合,まず,家族に同意をお願いすることになります。
しかし,家族がいないと同意する者がいません。医療機関に迷惑をかけるわけにはいかず悩んでしまいます。
それに,私自身は,胃ろうまでして生き延びることに抵抗があります。私自身が望んでいないことを,判断能力がなくなった高齢者にしてもいいのか悩んでしまうのです。

日本老年学会は2012年,終末期では人口栄養や人工呼吸器をつけない,あるいは中止する選択肢もあるとガイドラインを改めているようです。
そうすると,判断能力がなくなった高齢者の胃ろうの手術の同意も少し柔軟に考えてもいいのかなとも思います。

胃ろうに同意しないと,食事もとらず,水も取らず,眠りながら,穏やかに死んでいくことも多いようです。人間は年老いると必ず死亡することは分かっているけれど,その時期を成年後見人が決めることができるのかという疑問もあります。

結局,胃ろうの同意を求められて,私自身が成年後見人の判断として拒否したことはありません。いずれにしろ,終末期の成年後見人の悩みには名案がなく悩ましい問題です。

Facebookより