障害年金不受給の問題~クレサラ生活再建実務研究会in静岡に参加して~ (河内弁護士)
皆様こんにちは。津山支所の弁護士の河内です。
今月6日(土),静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」にて開催された,クレサラ生活再建実務研究会in静岡2015に参加してまいりました。
その中で話題に上がった障害年金不受給の地域間格差問題について紹介させていただこうと思います。
「障害年金受給の地域間格差」
「A県には,相対的に障害の程度が重い人が多く,一方で隣のB県には,障害の程度が軽い人が多い。」なんてことは通常ありえません。それにもかかわらず,全国都道府県ごとで,障害年金の受給・不受給率にかなりの格差があるようです。
日本年金機構2010年度~2012年度開示データによれば,全国都道府県別の審査件数に占める不受給判定の割合が3年間の平均で最も高いのは大分県24.4%,最も低い(すなわち受給判定が出やすい)のは栃木県4.0%となっており,およそ6倍の格差があります。ここまでの数字になると自然発生的な要因では説明がつきません。
ちなみに我らが岡山県は,13.7%で全国ワースト15位。全国平均は12.5%ですので,障害年金受給が認められにくい県,ということになります。(お隣の広島県(19.3%),兵庫県(22.4%),鳥取県(13.9%)よりは多少はマシですね。)
このような全国格差の原因の一つとして,都道府県ごとの審査に当たる医師(認定医)の数や質の違いが挙げられています。当事者の障害の程度は,その人がどこの都道府県におろうと変わりがないはずなのに,認定する医師の数や違いによって,受給不受給が決まるというのは,あまりに不合理であり,生存権,平等原則の観点からも問題といえます。その他にも認定基準の不統一,地域ごとの厳しい年金財政などが原因とされています。
年金機構と厚労省はこの問題に対し何もしていないのか?というと「年金の出し渋り」「判定に差がある」等の障害者団体,社労士の声になかなか耳を貸さず,平成26年になって初めて不受給件数の集計(2012年度まで)を始めたとのこと。年金機構と厚労省が,障害者の声を無視し,いかに地域間格差問題に対し真剣に取り組んでいなかったのかがよくわかります。
「その他の問題」
障害年金については,地域間格差問題以外にも,初診日要件の証明の問題,保険料納付要件の問題,官民格差問題など多くの問題をかかえています。
そして,このような問題の最大の原因は「障害年金の存在に対する国民の認識不足」にあるとのことです。障害年金の認識不足により,請求の機会を逸した結果,多くの障害者が「健康で文化的な生活」ができずに苦しんでいるのが現状です。
「弁護士だからできること」
障害年金の問題について,特に「弁護士だからできること」は何でしょうか。
年金の問題というと,やはり社会保険労務士の先生方が熱心に取り組んでおられます。ですから,弁護士として障害年金の問題を扱うにせよ,地域の社労士さんとの連携は不可欠ではないか,と思います。
その上で,弁護士会照会(弁護士の強力な調査権限)を活用し,例えば初診の記録を集める(カルテの保存期間を過ぎていても受付記録が残っているかもしれない。)などの調査を行い,また審査請求却下決定に対し行政訴訟を行う(社労士さんは,審査請求,再審査請求は可能でも,その後の行政訴訟はできない。)等によって社労士さんでは救いきれない,より多くの障害者の方々のお力になることができのではないかと思いました。
19時からの催し物も,気になりました。