選択肢 (新名社会福祉士)
社会福祉士の新名です。
生きているとどんな方でも「選択肢」の連続ですね。
今回はそんな話です。
—————————————————-
先日、高齢期に入った知的障害のあるAさんの終末期の看取りに関わりました。
担当としてはや数年、大変お元気なAさん、という印象しかなかった方でしたが、食欲不振から受診。
精密検査の結果、内臓のほとんどがガンに侵食されているという、とても辛い結果でした。
余命1ヶ月から3ヶ月。
Aさんには同居の親御さんも兄弟もいらっしゃいます。
主治医説明を受けるときに家族みんなが立会い、その衝撃の結果に涙しました。
「なんで?どうしてAにこんな辛いことが起きるの?」
家族の誰もがそう思う中で、現実はとても厳しい状況でした。
しかし。
家族がとった「選択」は「最期まで自宅で看取る」ことでした。
そこからのご家族一丸となったサポートの動きは、明らかに大変な状況にもかかわらず、とても素晴らしいものでした。
Aさん自身にはご本人の様々な状態を判断して、結果として告知はせず、とにかく家族として精一杯できることを行い、一緒に最期までご自宅で過ごされました。
この時に私に求められた役割は「家族の選択肢の確認」でした。
「手術するか否か」
「ホスピス病院へ入院させるか否か」
「外出させるか否か」
「服薬の選択はこれでよいか」
「もっと本人にを楽にすごさせるには」
など、実際の決断は担当ソーシャルワーカーである私ができるものではありません。
何を助言すれば・・・と一瞬悩みました。
けれど、こうした局面で大切なことは、「この家族に悔いを少しでも残させないこと」と考えました。
「答え」は誰にもわかりません。医者でも家族でも本人でも。
しかし、どこまでもAさん寄り添っているご家族の姿からは、Aさん自身に精一杯生きて欲しいという願いと、そのために迷いを捨てたい姿がみえました。
そこからは面会のたびにAさんとご家族との対話を続け、特にご家族の気持ちの反射板になりながら、辛さも喜びも家族が共有できるようにしていきました。
ソーシャルワーカーは言葉のキャッチボールの相手なのです。
どこまでも相手の言葉を汲み取り、とことん返す。
そして、話す本人が自分の気持ちに気づき、整理されていく。
最も基本的なソーシャルワークである「キャッチボール」を続けました。
「これがソーシャルワークなんだよ」
Aさんとご家族から改めて学ばせてもらいました。
Aさんは本当に安らかな最期を迎えられました。
ご家族は「Aが家族を一つにしてくれた。」とも話されました。
決して全てにおいて選択に悔いがなかった、とはいえないでしょう。
けれど、通夜でお会いしたご家族のむしろ凛とした姿が印象的でした。
———————————————————-
私もAさんには何十年後?にあちらでお会いするでしょう。
さて、その時なんてAさんは言ってくれるのでしょうか?
人生の選択、みなさんはどうされていますか?