振り回される支援者? (新名社会福祉士)
いつもお世話になります。
社会福祉士の新名です。
今回は【振り回される支援者?】というお話です。
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Aさんは若くして統合失調症を発症し、入退院を繰り返しながら、今はアパートで一人暮らしの方です。
通院も欠かせず、今の主治医に辿り着くまでも何件も病院をかわってきました。
Aさんは今も幻聴はあるようで、少し調子を崩すと「声の主」とケンカを始めそうになります。
暮らしぶりは障害年金と作業所の通所、それを補う生活保護を収入に生活しています。
ヘルパーさんともトラブルなく、家事などは調子がいいと一緒にこなしています。
そんなAさん。
主治医に限らず、作業所もヘルパーも今のところに落ち着くまでが大変だったそうです。
というのも、Aさん曰く「誰も私の話を聴いてくれなかった。」から。
確かにAさんは気になることは、大小の違いはあれど、とにかく「訴え」てきます。
新名も担当になって数年ですが、最初の半年はとにかく電話、電話、電話・・・・。
しかも相当細かい、はじめは「何がそんなに不満になるのか?」と戸惑うばかりでした。
Aさんはこういっては大変失礼ですが、正直見た目も怖く、話し方も決して穏やかな感じの方ではありません。
支援する側からすれば、人によっては単純に怖いと感じるようで、それを理由に暗に支援を断られたこともあります。
しかも、訴えは内容にもよりますが、一事が万事、応答できない。
新名も最初の半年は「振り回されてるなぁ」と感じて、むしろケンカごしになりそうなことも度々。
しかし。
ふと「振り回される」とはなんだ?
支援者が振り回されるって、ものすごい勝手な発想ではないか?
誰の都合で「振り回される」「振り回す」なんて理屈が成立しているんだ?
と感じました。
本当にAさんの訴えの奥底にあるものはなんだろう。
基本である、そこに行き着きました。
本当にAさんの話をきちんと「聴くこと」が必要ではないか、もう一度そこからやり直そう、そう思えました。
もちろん、そんな簡単にたどり着けるわけではありません。
けれど、ヘルパー事業所や作業所のスタッフとも話し合いながら、「聴く」ことに徹しよう、とにかく「聴こう」に徹しました。
辛抱強く、というのが正直な感想ですが、Aさんがやっと「誰も私の話を聴いてくれない。」と口にしてくれたのです。
Aさんは振り回すどころか、自分の奥底にある言葉にならない苦しさや辛さ、どうにもならない現状などなど、それを聴いて欲しい一心だったようです。
いまの支援チームは、なんとか同じメンバーで3年ほど続いており、Aさんもかなりスタッフに穏やかに接してくれることも増えました。
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悲しいけれど、高齢者も障害者も「契約」の時代です。
支援者の事業所に「合わなければ」、契約も何かの理由をつけて切られる時代です。
「振り回される」と思う前に、支援者が足を止め、聴き、考えることをしなければ、それは排除しか生まないのかもしれない。
そう思うのです。
「制度の狭間」を生んだのは誰なのか。
我々、福祉側、支援にかかわっている人たちではないのか。
本来は対象者を選別しない、むしろどんな状況下にある人々にもアプローチすることが専門職ではないのか。
改めて考え、行動していこうと思います。