津山支所の弁護士の小堺義弘です。 美作国・地域資源活用ビジネス推進委員会主催の講演会に参加しました。...
津山支所の弁護士の小堺義弘です。
美作国・地域資源活用ビジネス推進委員会主催の講演会に参加しました。
講演:「家で死にたい」ってわがまま?自分の最後を考える
講師:東條環樹医師(雄鹿原診療所(広島県山県郡北廣島町荒神原)所長)43歳
場所:鏡野町夢広場2階研修室
講師は,人口2500人,高齢化率43%の地域の診療所(病床なし)で在宅緩和ケア等に挑戦し,へき地医療に献身する若手医師を顕彰する第1回やぶ医者大賞(こういう賞があるんですね。。。)を受賞された方です。
日本人の死亡場所は,1951年には家が82%,病院が9%でしたが,1975年ころに逆転し,現在は,家が10%強,病院が80%弱になっているそうです。
僕自身が,家で死ぬことを考えていたので,タイミングの良い講演テーマでした。
ある家族の,自宅での看取りの例を紹介していただきました(記憶に基づく再現なので,正確性に欠けますが。)。
「大きな病院でガンの手術を受けた夫。妻が紹介状を手に診療所を訪ね,何かあったらよろしく頼むとだけ言い残して帰ろうとするので,看護師が事情を聴取。夫は茶碗をもてないほどの激痛に悩まされていると知り,どうしたら在宅で介護を受けられるか検討するため,その日のうちに,医師が理学療法士と共に自宅を訪ねる。医療器具を導入し,緩和ケアのため医療用麻薬を活用して,介護のプランを組み立てる。3名の息子の協力も依頼し,週末は,平日の介護に疲れた母を助けるため,息子たちが順番で父の介護を担当する。
1か月程度経過すると,激痛が緩和されたためか,懸命に介護をする妻に対し,夫が優しくなっていく等の変化が生じる。
さらに時間が経過し,ある夜に医師が様子を尋ねに行くと,夫は寝ており,妻も休んでいた。息子3人が酒盛りをしている。順番で夫を看るはずなのに。。。「先生も飲んでいきなよ。」「いや,車の運転があるので。」
更に時間が経過し,いよいよ夫が弱ってくる。
亡くなった当日とその前日,長男の長男が小学校を休んで,夫の介護を協力した。長男の長男は,ただ夫の手をさすったりしていたらしい。
夫の死後,医師が町で長男に会うと,長男の長男が「僕も先生のような医者になりたい。」と言ったそう。」
こんな死の話を写真のような派手な格好で,おもしろおかしく話されるので,時間を忘れるくらい夢中になって講演を聴いていました。
これだけ地域のことを思って,寸暇を惜しまず働いている医師って本当にすごいなぁ,と感動しました。医師という職業に嫉妬を覚えました。年甲斐もなく,本当に嫉妬しました。普段は,トイレの便座に座るときにsitするくらいの日常しか過ごしていない僕が(笑)
「病院で死ぬことがあまりに普通になってしまった現在。死を日常として感じられない。」
「命は伝えられる。死に行く過程を示すことで家族,周囲に引き継がれる。」
「死は生の延長であり,医療介入の必要性は限られる。」
という,講師の3つのメッセージが,本当によく理解できました。
智恵と情熱をもって,地域の課題に立ち向かう先進的な取り組みに勇気をいただくと共に,弁護士としての器量の小ささを改めて恥じ入ることとなりました。
貴重なご講演,本当にありがとうございました。