【TPPって何でしょう?2】 岡山大学内支所 吉川弁護士 11月21日(土)に、三木記念ホール...
【TPPって何でしょう?2】
岡山大学内支所 吉川弁護士
11月21日(土)に、三木記念ホール行われたTPPに関する鈴木宣弘先生(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)の講演は、とてもわかりやすかったです。 その後の三雲崇正弁護士(第2東京弁護士会)の講演も含めて、個人的には、この講演をもっと広報しておけばよかったと感じました。
現在、TPP関連の記事は、毎日のように新聞に掲載されています(最近は少し減少してきましたが。)。しかし、その内容については、よくわからず、日弁連としてもあまりにも膨大な内容を含んでいるので意見が出しずらいようです。
しかし、当日の講演を聞いた私としては、TPPについて非常に問題性を感じました。以下のような点です。
① 本当に輸出産業にメリットがあるのか(単にアメリカの意向に従うだけに過ぎないのではないか)
② 輸入される農産物(遺伝子組み換えの農作物や日本では使用が認可されていない成長ホルモン入りの牛肉、乳製品)の危険性は問題ないのか
③ 低価格の農作物により国内の農業は著しく衰退しないか。
また、そのことによって、国内自給率が大きく低下しないか(今、日本では40%程度らしいですが、20%を切るとも言われています。)、
さらに、その結果、将来的には農作物の危険性に関わらず輸入に頼らざるを得なくなる可能性はないのか。
そして、放置された農作地の増加による国土の崩壊しないか
④ 外国の医療保険会社が進出し、高額の保険料の医療保険に加入していなければ先進医療が受けられなくなる危険はないのか。
関税障壁を取り払って、世界的に公平な社会にして行こうというのは、非常に耳障りが良く、聞こえが良いのですが、これも本当の意味で(誰かが誰かの利益を犠牲にして利益を得るような発想がなくなり)、世界が一つになって初めて実現できることなのではないでしょうか。それも政府からの押し付けではなく、国民1人一人の意思で。
単に、安ければ良いという思考ではなく、消費者としても、本当に安全で安心なもの、本当に人のことを考えているものを作る産業を支えていく必要がありはしないかと思いました。
ところで、TPPには、法的にも大きな問題がありそうです。
講演を聴いて、個人的に特に問題に思ったのは、以下の点です。
① TPP交渉の秘密性
TPP発効後4年間又は交渉の最終ラウンドから4年間、交渉過程文書を秘密にする義務があるという点です。交渉過程は、いわば立法趣旨ともいうべきものであると思いますので、それが開示されないまま、議会の承認ということになれば、条約の解釈に当たり、承認時には予想できないような問題が発生する危険があります。このような秘密保持契約がある条約は、講演でも指摘されていましたが、憲法73条の3号の但書の条約の国会承認権を侵害しているではないでしょうか。
② 憲法76条違反
TPPには、ISDS条項=外国投資家がTPPに投資章に違反すると考える投資先政府や地方政府の措置により損害を被った場合に仲裁手続を利用可能にする条項が入るようです。
これによって、一企業の利益が、国家の判断よりも優先される危険があるとの指摘がされています。ISDS条項による仲裁人は、実際は、ビジネスロイヤーであり、一国の司法権を侵害して、企業側に有利な判断を下す危険が有るとの指摘です。
メキシコでは、ISDS条項に基づいて、有害廃棄物処理場による水質汚染が懸念されるため、地方自治体が処理場建物の建設不許可処分をしたところ、自治体の創業妨害を阻止しなかった中央政府に対し、賠償義務責任を認定したものなどが報告されています。
私は、決して閉鎖的社会が良いとは思っていないのですが、グローバル社会などという耳障りの良い言葉の背後に企業の利益優先(個人の尊厳の無視)ということが有りはしないか、もう一度見直す必要があるのではないでしょうか。