司法試験の答案 岡山パブリック法律事務所 弁護士 吉川拓威 雑感です。 岡山大学で非常勤講師をしてい...
岡山パブリック法律事務所 弁護士 吉川拓威
雑感です。
岡山大学で非常勤講師をしている関係で、試験科目ではないのですが、ロースクールの学生さんの書いたものをみることがあります。
そのときに、私が特に気になるのは内容よりも書き方(考え方の順番)です。
もちろん内容も明らかな間違いが書いてあるとそれは当然ダメなのですが、同じような内容でも、書いてある順番によって、読み手にはずいぶん違った印象を与えると思います。
新司法試験になってからの試験問題を研究していないので、以下に書くことは、今の試験問題には、的を射たものではないかもしれませんので、その点はご了解ください。
私は、受かる数年くらい前から、過去問を通じて答案構成をするときに、内容もさることながら、どのような順番で書いていくのが良いのかということを重視するようになっていました。事例問題であれば、当然に① 問題提起、② 規範定立、③あてはめ という流れなのですが、問題は、事例問題の場合に、どのような形で問題提起をするのかということです。もちろん、問題を読んだときに、明らかに自分の知っている論点のようなものであれば、なんとなく書けるのですが、「わからない問題」が出たときにどうするのかが重要ではないかと思っていました。というのも、試験には「よくわからない問題」というのも何問かは必ず出題されるからです。「わからない問題」なんだけれども、いろいろ自分で考えて書いたら、答案練習で以外に良い点だったということがあれば、なぜそうだったのかを考えて、その考え方(書き方の順番)を、「わかる問題」にも応用するようにしていました。
そうすると、点数が全体的に安定してきたからです。
合格者によって、いろいろ書き方はあるのだと思いますが、私が、一番しっくり来たのは、古くから言われている「原則→不都合→修正」という大きな流れの書き方でした。ここで原則というと、何か大原則のようなものを考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、そうではないのです。ここでの「原則」というのは、あくまでその問題を解くにあたって「出発点となる規範」という程度の意味で、具体的には、条文があるのか、ないのか、その条文の文言がどうなっているのかという程度の意味です。そして、「出発点となる規範」が決まったら、とりあえず、その問題文の事例をその「出発点となる規範」に当てはめて一旦形式的に結論を出してみるのです。そうすると、何か「不都合」というか「疑問点」が出てくるのが普通です。具体的には、問題文の中から、一方の事情と他方の事情を考量してみるとわかりやすいです(当てはめを先取りしている感がありますが)、そこで、はじめて問題提起をすることになります。
そして、あらためて出発点となる規範の背後にある趣旨にさかのぼって規範を定立する(内容は通説・判例がベター。わからなければ趣旨から適当に作るしかありません。)。そして、自分が立てた規範に当てはめをする。このような書き方が一番ベーシックなものではないかと思っていました。もちろん、科目によって特殊性があったり、論点によっては書き方が難しかったりしましたが、司法試験に対する自分の考え方が、学説・判例の内容の良しあしという観点ではなく、実際に書くときに「どのような順番で書いたら良いのか(どのような順番で考えていったらよいのか)」ということに視点が変わったことによって、ずいぶんと司法試験に対する考え方が変わったのを覚えています。
もっとも、これは、あくまで「試験」というレベルの話であって、実際の実務ではこれでは、不十分であるということは念のためですが付け加えておきます。実務では、勉強しなければならないことが、山ほどあって、「書き方」を含めて日々勉強ということも自分を反省しながら付け加えます(笑)。