【平成28年度ニュースレター①:岡山パブリック法律事務所の挑戦!】 約1年ぶりの事務所ニュースレター...
【平成28年度ニュースレター①:岡山パブリック法律事務所の挑戦!】
約1年ぶりの事務所ニュースレターを発行しました。
現在,発送作業を進めています。6頁と,ボリューム多めです。
薄っすら予告していたとおり,ニュースレターの記事は,facebook上でも公開していきます。なるべく幅広くの方に読んでいただきたいし,スマホ等で手軽に読んでいただきたいからです。
本日は,
所長水谷賢弁護士「岡山パブリック法律事務所の挑戦!」
を紹介いたします。
今年の4月から,所長に就任しました。改めてご挨拶申し上げますとともに,岡山パブリック法律事務所の現状とこれからの取り組みについてご案内いたします。
当事務所は12年前,弁護士へのアクセス障害の解消を目的として設立されました。そして,今日まで,「市民のための駆け込み寺」をスローガンとして活動して参りました。「弁護士に相談したいけど近くにいない」「近くにいても,高齢や障害のため出向くことができない」「お金がないから頼めない」,こんな現状を少しでも変えていこうという思いで活動してきました。
このため,弁護士のいない全国の司法過疎地に弁護士を派遣してきました。若手弁護士を養成して全国の過疎地に派遣する活動です。こうして,北海道,東北,山陰,四国,九州など全国の司法過疎地に多くの若手弁護士を派遣してくることができました。「無医村」ならぬ「無弁村」をなくす活動です。現在では弁護士が誰もいない司法過疎をほぼ解消することができました。
「駆け込み寺」の理念は今でも変わりません。しかし,当事務所の活動内容は時代とともに大きく変化してきています。私も70歳となり,弁護士生活も42年を過ぎました。この42年間,弁護士に対するニーズや弁護士の役割もずいぶん変わってきたことを実感します。
とりわけ,障害者・高齢者の権利擁護のニーズは年を追うごとに増大してきています。岡山パブリック法律事務所では,このようなニーズに応えるため大きなチャレンジをしています。
新聞やテレビで,「高齢者の貧困」,「年金崩壊」,「下流老人」「地方消滅」,「後見人不足」「後見人の不祥事」「介護人材不足」などの話題がなかった日はないように思います。これから確実にすすむ少子超高齢化社会のなかで,高齢者・障害者問題への取組みは待ったなしの状況になっています。
成年後見制度ができてから12年が経ちました。成年後見制度の利用者は全国で20万人近くに及んでいますが,認知症患者は650万人,精神障害者・知的障害者など判断能力が十分でない方は1,000万人を超えるとも言われています。しかし,1,000万人のうち2%しか後見人がついていないのが現状だとも思われます。これから,高齢者・障害者のニーズは確実に増えています。
当事務所では,このようなニーズに応えるため様々な工夫をしてきました。その一つが,法律事務所での社会福祉士の雇用です。弁護士だけでは高齢者・障害者の支援は困難だからです。これまで,法律事務所で,弁護士と社会福祉士が一緒に働くというスタイルは余り見られませんでした。現在では,弁護士と社会福祉士と事務局が各1名で,3名のチームをつくり,1人の高齢者・障害者を支援するというスタイルを確立してきたのです。こうして,事務所には「後見センター」という部門を設置しました。後見センターには,2名の弁護士が後見専門弁護士となり,8名の社会福祉士と協同して,後見業務をしています。そして,弁護士と社会福祉士と事務局がチームを組んで業務を行っています。この結果,現在では,岡山県で約600人の方の成年後見人となって活動をしており,全国でもトップクラスの実績となっています。
もちろん,一般事件の取組みも行っています。離婚や相続,交通事故などあらゆる種類の相談を受けており,相談件数は年間約2500件近くに及んでいます。また,約500件の訴訟事件等に取り組んでいます。
しかし,新たな課題も見えてきました。困難な案件や不採算案件に対する取り組みです。本年4月には,成年後見制度利用促進法が成立し,成年後見制度の利用促進を図ることは国の責務とされました。当事務所としても,この法律に大きな期待を寄せています。
高齢者・障害者の後見業務,権利擁護事業を進めるには,法律事務所の力だけでは困難です。医療・福祉・介護の関係者,そして行政や司法との連携が更に必要となっています。成年後見利用促進法により,司法と福祉の連携がさらに拡充することを強く期待しています。
当事務所でも,個々の高齢者・障害者の後見業務の質をより高めていくには,成年後見制度利用促進法の施行に頼るだけでなく,後見制度や高齢者・障害者の施策の不備を訴え,司法判断を求める「政策提言」型の訴訟にも取り組みを始めたところです。
広げる,繋げる 支援の輪 思いを繋ぐパブリック
これが当事務所の「後見センター」のキャッチフレーズです。今後,どうやって,支援の輪を広げて繋げていくのか。知恵と工夫と汗で,更に,大きなチャレンジをして参りたいと思います。どうか,ご理解,ご協力ください。
弁護士と社会福祉士と事務局がチームを組んで高齢者・障害者の支援を続けていくことができるのは,弁護士法人という組織があるからです。今後,この「法人後見」のスタイルを全国に広げていくために,チャレンジして参りたいと思います。