外国人サポートインタビュー
外国人サポートインタビュー (実施日:2017年8月30日)
(2) 先生自身が外国人サポートに関してどのような取組をされてきましたか?
(3) 岡山県の外国人に対するサポートの必要性を教えて下さい。
(4) 協同組合外国人技能実習生サポートセンターは,そのようなことに取り組んでいますか?
(話し手:水谷 賢弁護士)
水谷(以下M):いわゆる外国人問題とのかかわりは1980年代からになります。そのころ、二つの大きなトピックスがありました。一つは外国人登録法の指紋押捺制度の違憲訴訟、もう一つは、いわゆる「ジャパゆきさん」と称して東南アジアからわが国にたくさんの外国人女性が訪日・滞在・稼働するようになったことに伴うトラブルです。
一番目の指紋押捺制度は、当時、外国人登録法で、わが国に居住する外国人は、満14歳になれば、かならず、市役所の外国人登録課に行って指紋の押捺を義務付けられ、これを拒否すると犯罪、具体的には、(外国人)登録法違反として罰金刑に処せられていました。ここでわが国で初めて、岡山県の倉敷市・岡山市で、指紋押捺制度が憲法違反だと言って拒否した人がいるんです。その二人の弁護を始めたのがきっかけです。二人とも韓国人青年で、そのうちの一人がコン・スォッキャン氏なんですね。
M:公知の事実だろう(なお,コン氏には名前を出すことについて了承を得て掲載しています)。
それが結局、平成元年の天皇崩御によって恩赦となるまで、その(指紋押捺拒否の)一連の裁判が続いて、延べ2千数百人の拒否者が出て、大きな社会問題になりました。そのころから外国人の権利・人権(の問題)に取り組むようになりました。
もう一つは、いわゆる「ジャパゆきさん」。これは、山崎朋子という小説家がいて、そのころ、『サンダカン八番娼館 』という小説を書いて、社会問題になったんです。つまり、九州を中心に多くの東南アジアの女性が、娼婦として働いていたのです。日本にフィリピンなど東南アジアから、80年代、多くの女性が来て、興行ビザと称してホステスとして稼働して、フィリピンパブを含めて多くの女性が働くようになりました。そのトラブルというのは、大変な酷使をされていたということです。たとえば、東北タイからは十数歳の少女が日本に連れてこられ、無理やりパスポートを取り上げられて働かされたとか、私が担当した事件ですが、愛媛県松山市の道後温泉事件といって、ソープランドで働くタイ人女性が経営者のタイ人のママさんをハンマーで殴って殺害したという事件がありました。その裁判の中における通訳の保障ということをめぐって、大きな裁判手続的な問題が生じてきました。こういったきっかけで関わるようになって、入国管理局に提出するビザの関係書類の作成などに関与するようになりました。
こういう差別や偏見の中で、外国人がどういうふうにわが国で人権を保障されるのかということは、いろんなNPOの活動もそのころたくさん出てきて、私もいろんな相談などをあずかるようになりました。これが一つのきっかけなんですね。
それで、このパブリックを立ち上げて12年が経ちますけれども、パブリックで高齢者や障害者の事件とたくさんかかわるようになって、当然、介護施設や福祉施設の方々と接触する機会が多くなったところ、いわゆる2025年問題、つまり、そのころには団塊の世代が750万人も出てきて、36万人の介護職員が不足するという統計が厚労省で発表されました。
そういう受け皿を誰が担っていくのか。そこに外国人技能実習制度という制度があって、その制度の中に介護職の実習生を受け入れようというのが政府の政策で出されて、この10月に二つの法律が改正されました。一つは外国人技能実習生適正化法、もう一つは入管法の改正で、いずれも介護職員を外国人で担おうという方向での法改正がなされました。
この法改正を受けて、多くのアジアを中心とする外国人が介護職に就くことになると、昔経験したのと同じような様々なトラブル、たとえば、労基法違反だとか差別や偏見に基づくいろんな人権侵害だとかそういった問題がたくさん生じることになるので、適正な技能実習制度をどういうふうに進めていくのかという観点から、専門職、弁護士や社会福祉士や行政書士など、そういう他職種がチームを組んでサポートをした方がよいということで、昨年の7月にこの協同組合を設立して、これから活動しようというところです。
その活動の第一の取り組みとして、この10月から、アジア、具体的には、ベトナム、フィリピン、インドネシアで日本に来て介護職を志す若者・青年に、eラーニングといって、日本とその3国をインターネットでつないで、日本語の基礎的な研修と、もう一つは、介護の初任者研修レベルの授業を行ってはどうかということで、とりあえず、日本語事業を始める、そういう段取りを、他のNPO団体が行うそれに協力して、行うようになりました。
法令の施行がまだはっきりしていなくて、早くて来年の春以降になるのですが、そうなれば、多くの介護職の外国人が日本にたくさんやってきて働くことになると。そのバックアップをしていく。そういう活動をするようになりました。
と、これがまぁ大体のアウトラインです。
M:そうです。いま技能実習生として働ける分野というのは、農業とか水産業とかそういう第一次分野、カキの養殖だとかカツオの漁船に乗って航海に出るとか農業をするとかです。ちょっと横道にそれるのですが、それってすごく難しいというか、大事というか。たとえば、カツオにしたってシーズンがあるし、農業にしても、たとえば、レタスの収穫期には非常に人手が要るし、カキも同じように、正社員の雇用では賄いきれない労働のニーズがあって、それを非正規で補おうとするとわが国の労働力ではなかなかそれが供給できない、ということで、たくさん第一次産業を中心に外国人技能実習生が入ってきたとうのは事実なんです。
ただ、指摘のように、低賃金、つまり残業代を支払わないという悪質な使用者もいるので、そういう人に対して、どのように監視をしていくのか。それは本来なら監理団体とかが行うんですが、実態はあまり機能していないところが多いので、それを適正に行うようサポートする、協同組合が期待されている、そういうふうに言っていいかなと。
M:具体的には、実習計画というのを作って、そこに法的保護情報の提供が義務付けられているのですけれども、そこで労働基準法等の知識をきちんと教えていくとうのもその中に入ります。道路で人は右、車は左というルールが違ったり、外国人労働者が犯罪に巻き込まれる、たとえば、海外送金だとか携帯電話だとか消費者被害に巻き込まれるケースも多いので、そういう被害にあわないようにという意味で予防的な講習というか研修ももちろんされます。
M:当事務所が法人として参加しています。それから、コン職員が社会福祉士として参加していて、あとは、入管業務に精通したNPO法人メンターネットのメンバーの方たちが参加してつくられた団体になります。
M:事業者が組合を作っているのではなく、専門職が作っています。
M:そうです。事業者の団体でもないし、技能実習生の団体でもない。
M:昨年の7月。
M:法案の成立を待っていて、この10月に法案が成立して来年(2018年)の春に施行になると、たくさんの介護技能実習生が入国してきます。実習生は全国各地の特別養護老人ホーム等で働くことになります。そのときに、法令上は、実習生を呼び寄せることができるのは監理団体なんです。監理団体はいろんな事業者の集まりです。建設だとか農水産だとか、いろんな職種を対象にした呼び寄せるための団体で、そこで呼び寄せた人が個々の技能実習生先の事業所と雇用契約を結んで賃金を払うことになるのですけれども、入国後2か月間は監理団体が受け入れて宿舎だとか事業とか研修を行うんですね。それを行った後に、個々の事業所と2年なら2年、雇用契約を結んで賃金を払ってやっていくんですけれど、監理団体はその実習先の雇用がきちっと法令上適正に行われているかどうか本来監理する責任があるんですね。たとえば、定期訪問だとか、そこで不正を見つけるとか。いろんな問題があるんですよ。たとえば、逃亡する人も出てくるし、低賃金も出てくるし、パスポートを取り上げて転職を防止するとか、様々な負の面が出てきているので、それらの監理を監理団体だけに任せていいのかというのが、政府では問題となっていて、そこに外部監査だとか外部役員を派遣することが法令上義務付けられているんですね。つまり、内部の監理団体だけではなくて、外からのチェック、それをする人が今のところいないので、専門職がそういうチェック・監理を行っていくということをサポートしていく事業になります。
M:NPO法人メンターネットと今回の協同組合外国人技能実習生サポートセンターとは別団体です。メンターネットは、いろんな外国人のビザの取得を中心にした相談機関になります。協同組合は、そうではなくて、この10月に成立した改正法の施行に伴う監理団体に対する指導・監督・助言が中心になります。
M:まだ具体的にはないですね。岡山県下に監理団体って70くらいあるんですよ。すでに活動しているのが。そのうち半数くらいが協議会を作って、いろんな情報交換や研修をやっているんですね。もちろん、そういうところにも出させてもらっているし、賛助会員にもなっているんですけれど、仕事の依頼というのは監理団体からくることは予測されます。なぜかというと、改正法で監査や外部役員が求められているからです。政府はこの機会に悪質な監理団体を淘汰しようとしているんです。それで、優良なところを残してやっていくことになるんだけれども、今のところ、法令に基づいて適正な業務を遂行するだけの能力、組織体制になっているのかが非常に重要になっていくので、そのあたりをサポートしていくのが大きな仕事になっていくのかな、ということです。
M:そう整理していいと思います。岡山県には216くらいの特別養護老人ホームがあります。そこに1万人近くの利用者がいるといわれているんです。でも、人手は足りないんですよ。人手が足りないために、いろんな介護事故につながるリスクをかかえているんですね。それを解消するには、人を増やすということになると、日本人だけで確保できなければ、外国人の力を借りるしかないんだけれども、日本語能力、つまりコミュニケーション能力がついていないと無理だし、介護という仕事に一定の使命感・責任感がないと無理なので、そういった人材をどうやって確保するのかと。
いわゆる送出し機関というのがあって、海外ではまだ介護施設というのは日本ほどあるわけではなくて、介護職員というのはいないし、介護のイメージがわからないまま日本に来るということも十分ありえます。したがって、ナースが来るとか、リハビリセンターの職員が来るとか、そういう経験や関心がない学生が来る可能性があります。海外ではそういった人たちをどういうふうに養成して日本に送り込むかは国策になっているんです、ある意味で。外貨稼ぎという意味でも、就職あっせんという意味でも。受け入れ先も優秀な人材をいい施設に入れたいというのがある。そういう需要と供給のバランス、マッチングをどうするかというのは非常に重要な問題なんですけれども、一番の問題は、日本語能力。これは、N1からN5までのレベルがあって、N4レベルで入って、N3レベルに引き上げようというのが当面の目標なんです。N4レベルというのは、簡単な日常会話しかできないんだけれども、それで十分やれるかというと、介護施設の側からすると、たとえば、申送り事項は日本語で「昨日夜徘徊してました」とか「熱が出ました」とか「失禁しました」とか「家族からこんな申出がありました」とか、文章で申し送りをしたり、言語で伝えてコミュニケーションをとるというのは非常に重要なツールなのに、それができないことによって介護事故、あるいは、コミュニケーション不足によるトラブルが発生することになるので、その日本語能力をどうやって身に着けさせるか。たとえば、ITを使って、電子カルテと同じように「徘徊」というキーを押せば自動的に日本語に変換できるというようなシステムをどうやって作るかとか、そもそも手書きの場合はどうやって覚えてもらうのかとか、非常に重要な問題になっているんです。
一番重要なのは、介護の精神、姿勢なんだけれども、それをどうやって伝えていくか。たとえば、介護の現場をよく知っている専門職、介護職員だとかケアマネだとか社会福祉士だとか、そういう人たちがどうやってテキストをつくっていくのか。今、テキスト部会を作って、テキスト作りを多言語でしていかなくちゃいけないし、そういう教育が極めて重要になってきているので、そこをサポートセンターはどうつなげていくのかということが問題になってくるんですね。
ちょっと上手く説明できなかったけども。なんだったっけ、質問。もう忘れた(笑)。
法的なケアのみならず、教育的な観点とか、いろいろサポートが幅広く必要になってくるということだと思います。
M:ざっくばらんに言えば、今まで監理団体というのは、農業、水産業、繊維だとかにたくさん出してるんですよ。1万6000人くらい岡山県はいますけれども。そういう鉄鋼だとか繊維だとか造船をやっている監理団体が、今度は介護がどうも儲かるから介護の仕事もやろうかというふうに参入されたのでは、機械や物を作る仕事ならばまだいいけれども、人と人とのコミュニケーションを大事にする仕事で、適正な技能実習が確保できるのかというと、非常に危惧感を持ったんです。それがスタートなんですよ。だから、せっかくアジアから来てもらうとすれば、そういう専門職が、介護の人を含め、いい研修や技能実習を担保していく、そういうところがスタートです。
M:そのとおり。
M:国際結婚が増えて、国際離婚に伴う子の引渡しも含めて、たくさんトラブル、それについての需要が増えてきていますよね。その人たちが日本で生活するときに交通事故だとかのトラブルが増えてきて必然的にサポートが必要大なのもある。それから、学力の高い外国人、優秀な外国人学生をどうやって確保するか、それはそれで非常に重要な問題になっています。ローソンは新入社員の1割から2割が外国人採用なんです、正規の。つまり、社会がグローバル化すれば、労働力のグローバル化も必然で、水が高いところから低いところに流れるように、賃金の低いところから賃金の高いところに労働力が国際的に移動するのは、ある意味で避けられない。そこで、受け入れた日本の方でいい仕事を見つけていい生活ができるように保障しないと本当の意味でのグローバル化はないわけで。日本は、これまで、戦前は満州だとかブラジルだとか中南米だとかカナダとかハワイだとか、バンバン移民させて、戦後高度成長で儲かったらなかなか人を入れないというのはいかがなものかと。多国籍な民族であればいいんだけれども、日本は一国一民族という神話の中でどこまでグローバル化していくのかは、技能実習を含めて、大きな課題なんだろうなと。そういう問題もあるし、要するに、人口がどんどん減っていったら、労働力はどうやって確保していくのかはどうしても避けて通れないので、弁護士もそのあたりのところを考えていく必要があるのではないかと。そういうのが出発点。人口がどんどん減っていったら、小さいところでも身の丈にあった経済成長でいいんだとか割り切れればいいんだけれども、それで上手くいくのかどうかまだ結論は出ていないわけで。
M:いま岡山県は200万人近い人口があるんだけれども、たぶん定住外国人は2万人いないと思いますね。
M:国際結婚したら子どもは日本国籍になります。日本に来る人で多いのは、留学生。戦前からいる韓国人や朝鮮人は、どんどん少なくなっているので、今は第2位。いま定員割れしている岡山の私立大学は海外から来ている人が半分以上ですよ。そのくらい人は動いている。
M:ところがね、昨日の新聞をみてビックリしたのが、介護福祉士というのは平成29年から国家試験になるんですが、そうなると、専門学校に行って受験しないといけないんです。何が言いたいかというと、介護専門学校の外国人の入学者が大幅に増えてくるんじゃないかと思うんです。
玉野総合医療専門学校の先生と話をしたんですが、日本人の高校卒業した高校生3年生が介護専門学校に進学したいと言うと、親が反対するんだって。なんで毎年200万も授業料払って介護に行くんだと。それで定員が満たなくなっている。介護に行くよりも他に仕事があるだろうと。つまり、介護を志望する若い学生が少なくなっているけれども、外国人が増えているというのが、僕ちょっと意外だったんだけれど。なんでかなと思って。
M:でも、賃金は決して高くないんですよ、介護は。
M:日本に来たら、高い賃金のところで働きたいじゃない。東京や大阪は賃金、時給が違うから。
だいたいの特養とかの施設とかは、グループホームは別として、郊外をはじめ不便なところじゃない。山の中とか。そういうところにベトナムから来て一人さびしく、あとは仕事ができるのかなという心配もあるし。だいたいコンビニがあって、便利なところじゃないと。外国人でも。
それから去年、僕はベトナムに視察に行ったら、みんな日本の事情を知っているし、LINEとかFacebookとかですごく情報を入れているんですよ。介護の3Kという意味も知っているし、どのくらい賃金をもらえるのか、就職はできるのかとか。昔のように騙されて連れて来られるということもあるのかもしれないけれど、むしろ向こうで選んで、情報を仕入れている人もいる。どんどん携帯やスマホでつながってる。
M:まだ1回ですね。
M:ベトナム。
M:藤井嘉子弁護士に聞いたら「行ったかなぁ」って。
M:聞いたでしょ?すごいスピードで高齢化が始まるので、いわゆる介護ビジネス、これが新しいビジネスチャンスなんじゃないんか、って藤井嘉子は言ってた。
M:何それって。一生懸命、事業計画つくっていたよ。
M:ありがとうございました。