生活保護FAQ
住民票なしでは生活保護を受けられない?
Q1 住み込みで働いていた先をクビになって住むところも失い、知人の家に身を寄せています。
生活保護の申請に行ったら「住民票がうちの自治体にないから生活保護は申請できない」「若いのだから働きなさい。」などと言われてハローワークを案内されたのですが、そもそも面接に行く交通費すらありません。
どうすればいいのでしょうか。
若くて働ける場合には生活保護が受けられないというのは誤りです。
生活保護は、
①日本国民又は一定の範囲の外国人が、
②保護を要する状態(=困窮した状態)にあり、
③能力や資産が活用されている場合に、
④本人の申請があったり、差し迫っているために行政が職権で保護しようと決めた場合
に開始されます。
能力や資産の活用というのは、例えば貯金があるのであればそれを活用してください、というような事(資産の活用)です。
「若くて働けるという事は、能力を活用すれば生活保護を受けなくてもいいのだから、生活保護を受けられないのでは?」と思う方もおられるかもしれません。
しかし、本人がどんなに働こうと思っていても、働く場がなければ働けませんから、仕事が見つからない場合には、「能力があるのに活用していない」ということにはなりません(名古屋地裁判決 1996.10.30)。
Q1の場合には、仕事が見つかっていない上、仕事を見つけようにも面接さえ受けられないという状況ですから、生活保護受給の要件を満たしています。
☆住民票がないと申請できないは誤りです。
生活保護を申請すべき福祉事務所は、居住地を所管する福祉事務所です。
「居住地」とは、「継続的に生活を営む場所」、つまり文字通り「住んでいるところ」を意味していますので、住民票がなくとも、継続的に生活を営んでおり、他の受給要件を満たす人について、居住地を管轄する福祉事務所は、生活保護を実施しなければなりません(生活保護法19条1項1号)。
また、各地を転々としているなどの事情で居住地(住んでいるところ)がよくわからない場合には、「現在地」、つまり「今いる場所」を所管する福祉事務所に保護を申請すればいいことになっています(生活保護法19条1項2号)。
経済的に扶養してくれる家族がいた場合は生活保護を受けられない?
Q2 生活保護の申請に行ったら「弟さんが裕福なのだから、弟さんがあなたを扶養すべきだ。生活保護はもらえない。生活保護を申請したら、弟さんに、あなたを扶養するように言う。」と言われました。
弟とは、もう10年以上連絡をとっていませんし、生活保護を申請したことを知られたくありません。
どうすればいいでしょうか。
生活保護を申請する場合、家族に扶養ができるかどうかの照会がなされます(生活保護法24条8項、28条、29条参照)。
ただし、家族が「扶養できません。」と断った場合に、実際に扶養してもらっていないのに生活保護を受給できないという事はありません。
なお、扶養義務があるとは言っても、例えばDVの加害者である夫など、一定の人に対する照会は不適切ですので行えない事になっています。
生活保護の申請のは書類がないとできないの?
Q3 生活保護の申請に行ったら、「法改正があったので、書類が揃っていないと申請できない」と言われました。どうすればいいのでしょうか。
生活保護法の改正により、生活保護を申請する者は、「申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。」という事になりました(生活保護法24条1項)。
しかし、申請書の提出が申請と同時である必要はありませんし、特別の事情がある場合には申請書の提出は必要ありません(同項但し書き)。
従前から、生活保護の申請は、申請を口頭で行う旨明示して申請するなど、申請意思が客観的に明確であれば口頭でもよいとされており(大阪高裁判決2001.10.19参照)、その扱いは法改正によっても変わりありません(平成26年4月18日社援発0418第359号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法の一部を改正する法律等の施行について」参照)。
生活保護受給者の車の所有について
Q4 生活保護を受給しはじめたところ、福祉事務所の担当者から、「車を所有しては駄目だ。早く廃車にするように。」と言われました。
しかし、私は足が悪いので自転車や徒歩での移動は難しい状況です。通院するのに、車がなければ困ってしまいます。住んでいるところも田舎ですので、公共の交通機関に頼ることもできません。
それでも車を所有してはいけないのでしょうか。
現在の実務の運用では、基本的に生活保護受給中の車両の所有は認められないことが多くあります。
実務の運用基準では、例えば、通勤用の自動車については、障害がある、公共交通機関の利用がとても難しい地域に住んでいる、深夜勤務の仕事であるなどといった条件を満たす場合に、処分価値の小さな自動車であれば、所有が認められるとされています。
また、障害のある方が通院などのために自動車が必要な場合も、公共交通機関の利用が難しいような地域にお住まいの場合、車の所有が認められることがあるとされています(2014年度版 生活保護手帳)。
実務の運用基準はあくまで例示であると考えられますので(福岡地裁判決1998.5.26、同2009.5.29参照)、個別のケースについてはお問い合わせ下さい。
Q4のケースでは、足が悪くて通院等に車が必要であること、公共交通機関に頼れないこと等からすれば、車の所有が認められる可能性が高いと言えます。
警察に拘束中のときの生活保護の扱い
Q5 生活保護を受給中の兄弟が刑事事件を起こして捕まりました。
警察に拘束されている間、生活保護はどうなるのでしょうか。
現在の運用では、身柄を拘束されると、一時的に保護を必要としなくなったとの判断により生活保護は停止されますが、起訴猶予になった場合などには停止が解除されることとなります。
また、起訴されると保護を再開する必要がないと判断されて廃止されます(2007年度版 生活保護運用事例集問8-29)。